秀808の平凡日誌

第2話 初戦

第2話 初戦

 一日たった今、ヴァン達は『神聖都市アウグスタ』にいた。

 途中、『ウルフ』や『ティンバーマン』などに遭遇したが、皆通る邪魔になる奴だけを倒したり、無視していた。

(ここが・・・アウグスタ・・・か)

 ヴァンは、生まれて21年間古都以外から出たことがなかったためこの街の持つ神秘的な美しさに虜になっていた。

 まぁ、出る機会がなかったというのもあるが。

「何々・・・アシャーは、中央の神殿にいるらしいな・・・・・・おい、ヴァン?」

 ラムサスが言った言葉にハッと我にかえるヴァン。

「・・・あのな、俺達は命令で来てるんだ。観光で来てるんじゃない、それを実感してもらおうか?」

「・・・すまん」

 ヴァンは素直に詫びると、ラムサスとロレッタと一緒に神殿に向かった。



 神殿内部

 ヴァン達が探していたビショップ、アシャーと、客人なのか1人のウィザードが話していた。

 が、話の雰囲気は重苦しい。

「・・・地上に残ってまだ『RSDSTONE』の探索に協力している私に何の用かと思えば・・・そんなことに、協力はできません。ファントム・クラウンさん?」

 ファントム・クラウンと呼ばれたウィザードは、多少の憤りを隠せない様子で言い放った。

「・・・ふん、昔の天使とやらはそこまで頑固なものか。」

「・・・お帰り願えますか?お客がもうすぐ来るのです。」

「いいだろう、帰ってやる・・・だが、その前に・・・」

 ファントムが『鋼の杖』を掲げると、杖の頭上から熱気を帯びた玉が5個現れる。『ファイアボール』と呼ばれるウィザードのスキルだ。

「・・・貴様を殺してからな!」

 杖を振るったと同時に、6個の『ファイアボール』がアシャー目掛けて飛んで行く。

 アシャーは咄嗟に横に飛ぶと、さっきまでいた場所に『ファイアボール』が命中し、爆発した。

「・・・あなた、正気か!?私を殺しても、何も・・・」

「かまうか、俺に従わない者は『死』あるのみだ!」

 そして間をおかず次の『ファイアボール』が放たれる。

「・・・そこまでやるなら、こちらもそれ相応のやり方をさせてもらう!」

 アシャーは『タワーシールド』で攻撃を防ぎながら向かっていく。

 その動きは速い!距離を見る見る詰めていく。

「お返しです!『ゾーンスマッシュ』!」

 持っていた『ハンマー』を光が包み込み、強烈な一撃を放った。

「なめるな!」

 言ったと同時に突如出現した水のバリアに、威力が削ぎ落とされる。

 『ファウンテンバリア』だ。

 だが、アシャーの放った一撃はファントムの胸に命中、胸盤の鎧を打ち砕き、ファントムを吹き飛ばす。

 だが、ファントムは空中で素早く体制を立て直すと、体制を崩すことなく着地した。

「こいつ・・・楽に死ねると思うな・・・?」

 そこへ、ヴァン等3人が到着した。

「な、何がどうなって・・・?」

「あれがアシャーか・・・なぜ襲われてる!?」

 困惑するヴァンとラムサスに、今すべき言葉をかけるロレッタ。

「どうなってるかわかんないけど・・・アシャーさんに加勢しよう!」

 そういうと『ランス』を構え『ジャベリンテンペスト』を放った。

 槍から放たれた魔力が、ファントムに向かっていく。

 ファントムはギリギリのところでそれを避けたが、頬筋に切り傷を作った。

「・・・チィ、こいつらが客人か・・・」

 こちらに気づいたアシャーが叫んだ。

「よくきてくれました!状況は・・・わかりますよね?」

「あぁ!わかった。」

「とりあえず、あのウィザードを倒せばいいってことだな?」

 そう言った突如、ラムサスの目の前に巨大な水の塊が出現した。

「いけ!『ウォーターキャノン』!!」

 そして、水の塊は一直線にファントムへと向かっていく。

 物理防御力を高めることしかできない『ファウンテンバリア』の効果はなく、水はそのまま命中し、体をよろけさせる。

「ク・・・4対1はきついか・・・退く。」

 腰の道具袋から何か『魔石』をとりだし、頭上に向かって投げるとどこかに繋がっているであろう『ワープポータル』が出現した。

「貴様等・・・覚えておけ!」

 そういうと、ファントムの体は光に包まれ、そのまま消えた。

 アシャーが軽いため息をついた後、安心したような声で話し掛ける。

「・・・助かりました。正直、対人戦は苦手でして・・・」

「あなたがアシャーさんですか?」

「はい、そうです。用があるんでしたね。立ち話もなんですし、私の家にでも行きましょうか。」

「色々と、聞きたいしな・・・」



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